近年、発達障害の議論などでしきりに出てくる単語の一つがIQです。Twitterなどでも「私はIQ高いけど発達障害なんだ」とか、「ウチの高校は総じてIQが低かった」とか、そういったコメントをしばしば見ることがあります。
しかしそういう人たちや、あるいはそうでなくとも「IQ」と普段耳にする人たちはIQの意味を正しく理解して使っているのでしょうか? 本稿では改めて、IQという言葉の定義を明確に示して、その言葉の使い方を整理します。
まず、IQとは英語の「Intelligence Quotient」の略であり、人の知能の基準を数値化したものであることを理解する必要があります。そのIQの検査ではWAISやWISC(いずれもウェクスラー式知能検査の一つ)などという手法を用いて、比較的正しく知能を測定します。検査は数時間に及ぶこともあり、また専門家の立会も必要なのでとても簡易的に検査できるものではありません。従って、一昔前にTVで流行した「これが解ければIQ120」といった指標は、簡易的な検査にすらならないことを理解してください。
そもそも、このIQは知能の水準あるいは発達の程度を測定した検査の結果を表す数値であり、知的障害などの診断や支援に利用されるものです。それが簡単な問題を数問解いた程度で数値化ができると考える方が間違っています。
現在は「同年齢の集団で、どのくらいのレベルなのか」ということを、年齢別の平均値を基準として算出することが一般的です。なお、この手法では、厚労省は各数値の状況を「50~69:軽度知的障害、35~49:中度知的障害、20~34:重度知的障害、20未満:最重度知的障害」と定義しています。
一方で、IQというのは決して単一な数値ではなく、例えばWAIS-Ⅲ(前述Ⅳの旧版)では「言語性IQ」「動作性IQ」「合成得点による全検査IQ」という3つの数値が測定でき、ここでは言及しませんが更にそれを細分化して、個々人の特性を把握することもできます。それにより、例えば発達障害などの傾向を見極め、個々人にあった対策を施していくことが出来ます。そういった教育的な意味でIQは大変有用な指標であり、決して「頭の良さを測る」という単純なものではないのです。
まとめると、IQというのは「人間の知能を表す一つの指標」であり、その使われ方は頭の良さを測るという単純なものには収まらないのです。
【参考】
1. 「厚生労働省HP」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/101-1c.html)