寝すぎというのもIQには悪影響を及ぼす

睡眠不足がIQに良くない影響を与えることは既に研究によっても示されていますし、また直感的にもそれは理解できるでしょう。睡眠不足の翌日、仕事や勉強でパフォーマンスを十分に発揮できなかった経験を持つ人は多いと思います。

しかし、睡眠「過多」、つまり眠りすぎもIQに悪影響を及ぼすことはあまり知られていません。スイスのChild Development Centerなどの研究によれば、子どもの眠りすぎがIQに芳しくない影響を与えていることが明らかになりました。

実験室的に閉鎖されたものではない環境で、7歳から11歳までの60人の健康な子供を対象に睡眠行動と認知機能との関連を調べました。知的能力は、児童向けウェクスラー知能尺度(第4版)によって評価され、睡眠については、質問票、アクチグラフ(非侵襲性の腕時計のような睡眠監視ユニット)、および睡眠日誌によって評価されました。その睡眠と認知機能の相関分析により、週末の睡眠時間と知能指数の間に負の関連性、つまり睡眠時間が短くなるほどにIQスコアが上昇したという研究結果が明らかになりました。また、日中の眠気は、認知変数または睡眠変数とは特に関係がなかったという結果が得られています。

実はこの結果だけをみて「睡眠が短い方が良い」と考えるのは極めて不適切です。前述の通り、既に睡眠時間の短さは子どものIQに悪影響を与えることが明らかになっています。なので、この研究からの示唆は「ほどほどに」寝た方がよい、ということになりそうです。

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しかしこの研究について、「週末の睡眠時間」との相関が見られたということにも着目すべきでしょう。これの意味するところは、もしかすると平日の睡眠時間が不十分だからこそ、週末に寝だめをしてしまうことがよくない、ということかもしれません。また別の研究では、子どもの健全な育成には「10時間」の睡眠が必要ということも示唆されています。何歳まで何時間寝よう、ということを明確に示すのは難しい(ガイドライン的なものは存在します)ですが、子どもの発育状況やニーズに応じて睡眠時間を管理してやるのも親の務めかもしれません。

なお、大人については睡眠時間の長さとIQの相関関係についてはまだ明らかになっていません。しかし、睡眠不足が認知能力の低下を及ぼすのは既に明らかで、また体感的にも「寝だめ」をした次の日になんとなく頭が回らない、というのはこれも多くの人が経験していることでしょう。結局のところ、規則正しい睡眠こそがIQにも良い、という当たり前の結論が分かっただけなのかもしれません。

【参考】

1. 「Association between sleep duration and intelligence scores in healthy children」
(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20604614/)