IQを優生思想の根拠にすると、いつか自分の首が締まる

多様性の時代、と言われますがそこに犯罪者までもが含めて考えられることはまずありません。「犯罪は悪いこと」としてその背景までが理解されることもほとんどないでしょう。ですが、犯罪者の多くは知的能力(IQ)に問題を抱えている人が多いのが事実です。

上記は、日本の2012年の新受刑者の知能指数になります。

(データソースは法務省「平成24年 矯正統計年報」)

深い思考を重ねられず、短絡的に罪を犯してしまうケースは多く存在します。また、IQが低いが故に満足な生活が送れず、犯罪に手を伸ばしてしまうケースも多いです。「生活保護の申請」をすれば、と思うかもしれませんが、それすらも難しい場合があるのです。

単純に考えれば、IQが低い人が少なくなればなるほど犯罪の件数は減ります。例えば、振り込め詐欺の末端の「受け子」や「出し子」には、上記のように冷静に善悪の判断が付けられない、それをする能力がない人が一定数います。そういった詐欺は末端構成員がいなければ成立しないので、IQが低い人が少なくなれば次第にそのような犯罪も減っていくでしょう。

さて、ではIQが低い人を減らすにはどうすればよいでしょうか。一番手っ取り早いのが遺伝子の選別です。IQは遺伝的な影響が大きく、低い両親からはなかなか高い子どもは生まれません。それは環境因子よりも大きく、多くは絶対的な影響となって現れます。なので、IQが低い可能性が高い子供はなるべく生まないようにしよう、その方が子どもにとっても社会にとっても有益だ、という思想が発生します。

これが典型的な優生思想です。優生思想とは、「身体的、精神的に秀でた能力を有する者の遺伝子を保護し、逆にこれらの能力に劣っている者の遺伝子を排除して、優秀な人類を後世に遺そうという思想」です。この優生思想の危険性についてはナチス・ドイツの歴史を振り返れば良く分かりますので、ここでは詳しく説明しません。

しかしことIQにおいては、この優生思想の提唱者の首を最後には絞めることになるのが興味深いのです。例えば、人種で優生思想を推し進めても、その提唱者の人種が変わることはありません。しかし、IQでは優生思想を推し進めた果てには、提唱者自身が淘汰される結果に終わります。

これには理由が2つあります。

一つは、IQの測定方法。IQは現在医学的管理下のもと所定のIQテストを受験することによって求められます。テストの方法の詳細は解説しませんが、IQがどのように決まるかというと、ごく簡単に言えば「全人類のどのあたりに属するか」で決まります。つまり、「平均100、標準偏差15の正規分布のどこに収まるか」によって決定されるのです。

グラフ, 棒グラフ

自動的に生成された説明

上記の表のどこに属するかによってIQは決まります。すると、IQが高い人ばかりになるとどうなるか。平均が上がります。そうすると、今まで平均100であったのが元々の120程度が平均になり、それが新しい100になる。そしてそれが……と続くと、いつしか150あったIQがどんどん下位に落ち込んでいきます。低い人を淘汰する、というのはそういうことです。

そしてもう一つ。下のグラフは、「Transformations in the Couplings Among Intellectual Abilities and Constituent Cognitive Processes Across the Life Span」という研究によって得られた、年齢に応じた知能のプロットです。縦軸はIQのようなもので、高い方が優秀くらいに捉えてください。

グラフ, 折れ線グラフ

自動的に生成された説明

老いれば老いるほど、その知的能力が下がっていくことが分かります。つまり、元々高いIQがあった人も、老いれば並み以下に下がるということです。あの天才フォン・ノイマンでさえも最後は簡単な計算すら覚束なくなり、また南方熊楠も同様に自身の記憶力の低下に嘆いていました。例外はほぼいないのです。

今までIQで人間の選別をしてきたので、老人だからと言って容赦するのはアンフェアでしょう。優生思想の名のもとに、粛清されるのは避けられません。

優生思想の論拠にIQを持ち出すと、最後自身の首を絞めてしまうということです。

【参考】

1. 「法務省 矯正統計」
(http://www.moj.go.jp/housei/toukei/housei05_00010.html)
2. 「Transformations in the Couplings Among Intellectual Abilities and Constituent Cognitive Processes Across the Life Span」
(http://bernhard-hommel.eu/LifespanTrans.pdf)