巷でよく見られる「これが分かればIQ130!」に何の根拠もない理由

うすうす感じているかもしれませんが、巷で見られる「これが分かればIQ130!」という言葉は、99.9%誤りです(もちろん、IQ130に限らず)。一昔前は、そういったことを標榜するテレビ番組が流行していますが、今はWEB記事などにそういったキャッチーな見出しが付けられます。

直感的にそれが「間違い」ということは皆さんご理解いただけると思いますが、いかにそれが間違いかを丁寧にご説明します。

まず、現在IQというのは医学的に認められたIQテストによってのみ測定可能です。代表的なIQテストはウェスクラー式(WAIS)と呼ばれるもので、医者含む特定の資格を持つ人の管理下で、数時間に及ぶテストを受験することで測定ができます。この時点で、「テレビのクイズ番組のある問題が1問解けたから」と言って特定のIQが算出できるわけがないことが理解できます。

ノートパソコンを使っている男性

低い精度で自動的に生成された説明

加えてそのようなIQテストの問題は、簡単に言えば「問題が10問あり、その正解率IQを測定する」ものであって、決して「この難易度の問題が解けたからIQはこれ!」という代物ではありません。要すれば、ある算数のテストで最後の難しい文章題が解けなかった人も、最初の簡単な計算問題が間違っていた人も、(配点の多寡を無視すると)他の問題が全て正解だった場合は同じ点数になるはずです。センター試験をイメージするとよいでしょう。

加えて、IQというのは現在では複数の指標によって評価されます。専門的な話をするとWAISでは以下のような指標を用いた複数のテストで総合的にIQが算出されます。

<WAIS-Ⅳの4つの構成要素>

  • 言語理解指標(VCI):言語による理解力・推理力・思考力に関する指標
  • 知覚推理指標(PRI):視覚的な情報を把握し推理する力や、視覚的情報にあわせて体を動かす力に関する指標
  • ワーキングメモリー指標(WMI):一時的に情報を記憶しながら処理する能力に関する指標。口頭での指示理解や、読み書き算数といった学習能力、集中力に影響
  • 処理速度指標(PSI):情報を処理するスピードに関する指標

<WAIS-Ⅳの4つの構成要素の下位指標>

  • 言語理解指標(VCI)に関わる下位検査

基本検査:類似・単語・知識

補助検査:理解

  • 知覚推理指標(PRI)に関わる下位検査

基本検査:積木模様・行列推理・パズル

補助検査:バランス(16~69歳のみ)・絵の完成

  • ワーキングメモリー指標(WMI)に関わる下位検査

基本検査:数唱・算数

補助検査:語音整列(16~69歳のみ)

・処理速度指標(PSI)に関わる下位検査

基本検査:記号探し・符号

補助検査:絵の抹消(16~69歳のみ)

これらを複合して、全検査IQという、所謂「総合的な」IQを算出します。これもテストで例えると、国語・数学・理科・社会・英語を(加重平均はありつつも)総合的に加味して偏差値を出すのと同じです。つまり、「これはとければ……」的な問題は、数ある科目のうちの一つ、その中の更に1問だけをピックアップして解かせているだけです(しかも多くは制限時間を問わず!)。それで正確なIQを算出しようとするのは難しいでしょう。私立大学など入試科目が少ない大学の偏差値と、国立大学など入試科目が多い大学の偏差値を同じ土俵で較べるのが間違っているのと似た構図ですね。

もっとも、巷のIQテストによってはそのうちの一科目にフォーカスして問題を提供しているところもあります。また、その場合も一問だけではなく、しっかりと時間を取り複数問を回答させることにより、疑似的に当該領域のIQを算出できるようにしているテストもあります。もし無料でご自身のIQの近似値を知りたいなら、そういったテストを使うのもありでしょう。用法を間違えなければ、十分活用できると思います。

【参考】

1. 「日本文化科学社HP」
(https://www.nichibun.co.jp/)
2. 「WAIS・WISCとは?ウェクスラー式知能検査の特徴、種類、受診方法、活用方法のまとめ」(https://h-navi.jp/column/article/725)