IQテスト(知能検査)は何故必要なのか?

IQを測定することに意味があるのかどうかは、難しい命題ではありますが完結に答えを述べるとすると、「あります」。

もっとも、IQが高い(あるいは、高そうな)人がちっぽけな自尊心や虚栄心を満たすためなら、それは全く意味がありません。そういう人は、クイズ番組の「これが解けたらIQ130」みたいなもので満足していればよいのです。そういう人を相手にしているほど、IQ測定の専門家(心理士など)はヒマではありません。

また、単にIQを数値として「どれくらい賢いか」を測定することには意味はありません。例えば測定結果でIQが130であっても、言語性IQと動作性IQ(IQ検査の指標。双方を複合してIQの値を算出する)の差が著しかったらそれはそれで問題があります。要すれば、その数値が「何故その数値になっているか」というのが重要なのです。

特に子供については保護者や先生がその児童をどのように教育するかという観点で重要です。知能検査を実施することで、同世代集団内での相対的な子どもの位置(個人間差)や、一人の子どもの能力の発達の様相やバランス具合(個人内差)を知ることができます。そうやって子どもの発達の状態や困難な状況に関する客観的な情報を得ることで、最も適切な指導の方向性を考えることができます。また数値の例で言えば、例えば同じIQが100の子供でも、それぞれが抱えるパラメーター(ある能力は120で、また別の能力は80、あるいはそれぞれ110、90など)によって対処は全く異なるのです。

なお、知能検査の目的は障害の有無を判定、診断することにあるのではありません。結果的に障害が見つかったりした場合でも、その後の対処のためです。逆に言えば、知能検査をしなければ障害の有無も分からず対策が立てようがないので、そういった意味ではIQ検査は極めて有意義であると言えるでしょう。

これは大人の場合でも時に有効です。大人の場合は教育者あるいは保護者が指導するということは(一般には)考えづらいですが、自分の能力の凸凹(でっこみひっこみ)を把握することで、向いている作業や職業、あるいは苦手なものを理解でき、実生活に大いに役立てることができるでしょう。例えば処理能力があまり(相対的に)高くないが記憶力が高いという結果が出た場合には、事前の準備やパターン化を十分にし、それを記憶することで、その処理能力を補うことができるわけです。

なお、子供と大人が知能検査をする際の大きな違いは、検査結果の共有の配慮です。大人の場合は(大抵は)その結果を素直に受け入れることができますが、子供の場合はプライドを傷つけられることがあります。それはその後の指導を受け入れるかどうかにも関わりますので、その子供に合わせて最大限の配慮をして伝えるべきでしょう。なお、その保護者においても「事実を受け入れられない」場合がありますので、検査結果を扱う方は(この場では釈迦に説法になるかもしれませんが)当然最新の注意を払い、逆に保護者の側も冷静に結果を受け入れる準備をするべきでしょう。

【参考】

1. 「発達検査の活用(山口県公式HP)」(http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/9/3/b/93b453cf6d9185c85655b41d8526ec0e.pdf)

2. 「国立特別支援教育総合研究所 教育相談情報提供システム」
(http://forum.nise.go.jp/soudan-db/htdocs/index.php?key=muy7v5g0c-477#:~:text=%E7%9F%A5%E8%83%BD%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%81%AE%E7%9B%AE%E7%9A%84%E3%81%AF,%E3%81%AB%E3%81%9D%E3%81%AE%E6%84%8F%E5%91%B3%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82)