マルチタスクをしている瞬間人のIQは下がるし、そのダメージは継続する

マルチタスクとは、複数の作業を同時並行、短期間で切り替えながら同時進行で行う能力のことです。例えば、会議中にメールを書いたりすることがその代表例ですね。身近なところで言えば、スマートフォンをいじりながらテレビを見たり、あるいは子供をあやしながら洗濯物を畳んだりすることもマルチタスクに相当します。

一見、同じ時間で複数のことをやるのは二倍以上の生産性をもたらすので、是非とも「マルチタスカー」になりたいと思う人も多いでしょう。しかし、もしかするとその生産性は「まやかし」かもしれません。なぜなら、そのマルチタスクをしている間、あなたのIQは著しく減少しているのです。会議中に書いたメールは、後で見返すと絶望的な間違いを起こしており、再度謝罪のメールを送るはめになるかもしれません。そうすると、とても生産性が倍増したとは言えないでしょう。

ロンドン大学精神医学研究所の調査によると、電話で話している際にメールを送ることは、当事者のIQを一時的に10も押し下げる効果があるとのこと。この裏付けは、英国の企業で1,100人の労働者を調査した結果であり、その研究では電子メディアを使用したマルチタスク(要すれば、メールを書いたり電話をしたりすること)は、大麻を吸ったり夜の睡眠量が減少したりすることよりも、IQが大幅に低下することが明らかになりました。

また、マルチタスクが長期的にも悪提供を与えることも示されています。スタンフォード大学の研究ではそのような結果が得られました。同研究では、約100人の学生に以下のテストを行いました。前提として、被験者は「定期的に多くのメディアマルチタスクを実行するグ​​ループ(高いマルチタスカー)」と「マルチタスクを実行しないグループ(低いマルチタスカー)」の二つに分け、3つの実験を行いました。

一つ目の実験は、画面表示に関する実験でした。画面には2つの赤い長方形のセットだけが表示されるか、あるいは2~6の青い長方形で囲まれたものが表示される場合がありました。各図形構成は2度フラッシュ(投影)され、参加者は2番目のフレームの2つの赤い長方形が最初のフレームとは異なる位置にあるかどうかを判断させられました。要すれば、青い長方形をどれだけ無視して正しい答えにたどり着けるか、という実験です。

果たして、低いマルチタスカーは青い長方形を問題なく無視して回答しましたが、高いマルチタスカーは青い画像に気を取られ、低いパフォーマンスしか発揮できませんでした。これで、高いマルチタスカーが「物事を無視すること」に劣ることが示されました。

二つ目のテストは、アルファベットのシーケンスが表示された後、文字が繰り返し出現するタイミングを被験者に思い出させるというものです。しかし、ここでも高いマルチタスカーはパフォーマンスを発揮できませんでした。彼らは、多くの文字を見続け、頭の中でそれらを分類し続けることができなかったのです。つまり、「情報の保存と整理」にも劣ることが明らかになりました。なお、低いマルチタスカーはこれも高いパフォーマンスでクリアしました。

三つ目のテストは、文字と数字の画像を同時に見せられ、何に焦点を合わせるかを指示され、数字に着目するように指示された場合は、数字が偶数か奇数かを答え、文字に着目するように指示された場合は、その文字(アルファベット)が母音か子音化を答えるというものです。しかしここでも高いマルチタスカーはパフォーマンスできませんでした。「切り替えに優れる」ことすらなかったのです。これを仕事に置き換えると、「自分たちがしていない仕事についても考えずにはいられない」と研究者は言及しています。「高いマルチタスカーは常に目の前にあるすべての情報から引き出していて、物事を頭の中で別々に保つことができない」と閉じています。

人, 屋内, テーブル, 若い が含まれている画像

自動的に生成された説明

上記の研究から、短期的にも長期的にもマルチタスクは脳にとってよろしくない、ということが分かりました。もちろん、現実世界でマルチタスクを余儀なくされることがあると思います(例えば、上司の雑談に付き合いながら運転させられることもあるでしょう)。しかし、その機会は最小限に留めたほうがよさそうです。

【参考】

1. 「The Real Harm in Multitasking」(https://www.inc.com/travis-bradberry/the-real-harm-in-multitasking.html)
2. 「Multitasking makes us a little dumber」(https://www.chicagotribune.com/opinion/ct-xpm-2010-08-10-ct-oped-0811-multitask-20100810-story.html)
3. 「Media multitaskers pay mental price, Stanford study shows」(https://news.stanford.edu/news/2009/august24/multitask-research-study-082409.html)