一般に、知的障害はIQ(知能指数)によって決定され、それは主にIQテストと呼ばれる検査の結果によって規定されます。
厚労省は、ウェクスラー成人知能検査を検査キットとして捉えており、また精神疾患の操作的診断基準としてInternational Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems 10th Revision(ICD-10; World Health Organization, 1992)などを採用しています。
そしてICD-10に準拠し、知的障害については以下のように区分しています。
【軽度(Mild mental retardation : IQ 50-69)】
成人期においてその精神年齢は概ね9歳から12歳相当。学齢時に学業不振が表面化する場合が多い。社会的な興味は年齢相応である。成人になってから、仕事に就き、良好な人間関係を保ち、結果的に地域社会の一員として周囲から評価されている事例が多く、そのような能力をもっている。
【中度(Moderate mental retardation : IQ35-49)】
成人期においてその精神年齢は概ね6歳から9歳相当。幼児期から発達の遅れが顕著であるが、基本的な身辺自立やコミュニケーション能力、そして読み書きについては一定レベルの学習は可能である。社会生活や就業生活に必要な支援の程度には個人差がある。
【重度(Severe mental retardation : IQ20-34)】
成人期においてその精神年齢は概ね3歳から6歳相当。12歳頃までに2語文程度を用いる。人生のどの時期においても、生活のさまざまな場面で他者からの継続的な支援が必要である。
【最重度(Profound mental retardation : IQ 20以下)】
成人期においてその精神年齢は概ね3歳未満。身辺自立や節制(がまん)、コミュニケーション能力、さらには外出・移動において相当の制限がある。
更に、社会生活能力の目安として上記に準じて以下のように規定しています。
【軽度(Mild mental retardation : IQ 50-69)】
- 時間管理:~分後に待ち合わせはOK、通勤時間の質問に多くは回答できる
- 金銭計算:日常の買い物や銀行振込、通帳記帳等はOK、ただし金銭管理は支援必要
- ストーリー理解:コミックや簡単な小説から、筋書きや人間関係の理解がある程度可能
- コミュニケーション:少人数のグループで適切な会話が可能
【中度(Moderate mental retardation : IQ35-49)】
- 時間管理:~時~分に待ち合わせはOK、~分後に○○の理解は難しい
- 金銭計算:日常の買い物は可能。振込や引き落としなどには支援必要
- ストーリー理解:文章の読みは可能だが、理解や記憶は部分的
- コミュニケーション:1対1で個別で確認しながらの話し合いが必要
【重度(Severe mental retardation : IQ20-34)】
- 時間管理:時計(デジタル)の読みは可能であっても、日常生活に応用できる時間管理は難しい
- 金銭計算:買い物場所(コンビニ等)や品物、金額などは限定されるが買い物は可能
- ストーリー理解:文章の読みと理解は結び付きにくい。単語で表現できる指示が必要
- コミュニケーション:2~4語程度の指示理解は可能。言語のやり取りは1~2往復程度
【最重度(Profound mental retardation : IQ 20以下)】
- 時間管理:時計による行動コントロールは困難。タイマー等の利用が可能の場合も
- 金銭計算:自動販売機や特定の商品のみの金銭利用が可能な場合も、多くは他者に依存
- ストーリー理解:比較的限定された単語の理解が可能な場合も、発語と意味とは無関係な場合もある
- コミュニケーション:意思の疎通には、本人の生活パターンの理解が必要になる
一方で、素人判断で「上記に当てはまるからIQはいくつ」などと簡単に考えるのは危険です。正確なIQを診断したい場合は、関連領域の医師の監修もと、試験を含む診断を受けることが大切でしょう。
【参考】
1. 「発達障害の理解」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000633453.pdf)