IQは遺伝でほぼほぼ決まってしまう悲しさ

「蛙の子は蛙」と昔から言いますが「トンビが鷹を生む」とも言います。

IQに関してはどちらも正しいと言えるでしょう。後者については例えば、史上最高の頭脳の持ち主であるフォン・ノイマンやアルベルト・アインシュタインの両親は多少なりとも優れたIQを持っていたかもしれませんが、歴史に名を残したアインシュタインほどの頭脳の持ち主ではなかったでしょう。これは「トンビが鷹を生む」事例ですね。

一方で前者については既に40年以上前から定量的な事実があり、またそこからは大多数はこういった「蛙の子は蛙」であるという示唆が得られます。

書籍「IQの遺伝と教育」 (1978年出版) では、1970年頃に「知能指数IQは遺伝によって80%決まっている」という研究成果を、双子を基にした研究で発表しています。

なお、上記の元の論文は「IQ’s of identical twins reared apart.」です。以下要点を記載します。

  • 離れて育てられた一卵性双生児の122組の知能を分析した結果、サンプル間に有意差は見つからなかった。IQは正規分布しており、平均値は96.82
  • 双子間のIQの相関は.824であり、母集団(=122組の双子)におけるIQの遺伝率の上限を示唆
  • 双子間のIQの絶対差(非遺伝的影響と測定誤差に起因するもの)はカイ二乗分布に近似しており、環境影響が正規分布していることを示した
  • 結果、双子のペアの平均と差の間に有意な相関関係がないことから、知能指数に対する環境の影響の証拠はなく、環境の影響の差は知能に関連していないことを示した

このように40年前以上前に一旦議論は収束していますが、もちろん実験によって異なる結果が示唆されることは往々にしてあります。ただ、我々はこのような結果が「事実として存在する」という土台に立って、日々の生活を送ってもよいかもしれません。

また国内でも同様の研究があり、IQに精通した慶応大学の教授は「成人期初期の知能指数(IQ)も66%が遺伝の影響」「今の教育制度の中で『誰もが頑張れば東大に行ける』とか『(慶応大学に入学した)ビリギャルのようなことが誰にも起きる可能性がある』とか言うことは、欺瞞にすぎない」とコメントしています。

もちろん、前述の「ビリギャル」のような一発逆転が起きる可能性があるかもしれませんが、もし遺伝的にIQに優れない場合は、IQが遺伝的に高い人と戦う(ないしは、別の土俵で戦う)ための特別な対策が必要かもしれません。

【参考】
1.「IQの遺伝と教育」
(A.R.ジェンセン 著,岩井勇児 監訳、黎明書房)
2.「IQ’s of identical twins reared apart.」
(https://psycnet.apa.org/record/1972-10438-001)
3.「数学は87%、IQは66%、収入は59%が遺伝の影響! 驚きの最新研究結果とは」(https://dot.asahi.com/aera/2019072400072.html?page=1)