IQが高い人はそもそも脳の作りが物理的に違うという事実

賢いとは言えない行動をした人に対して「頭を割って中を見てみたい」と、慣用的にそしることはよく聞かれます。またそれとは逆に、賢い人に対して「頭の中、どうなっているのかしらん」思うこと、これもよくあります。

前者はともかくとして、後者の賢い人については、その賢いという言葉を知能指数が高いという言葉に置き換えて良いとすると、その頭の中についてはある程度分かっています。

実は、彼ら賢い人はそもそも脳の構造が違ったのです。

まず、よく聞く「前頭葉」とIQの関係性については、「Brain development and IQ」という研究成果に現れています。

  • 脳が行う複雑な演算処理は、この皮質にある神経細胞の発火に依存している。そのため、脳の皮質の厚さをMRIで調べたところ、知能は成長期における皮質の変化のしかたと関連している可能性があった
  • その中で、知能が特に高いグループに属する子どもたちは、他のグループに比べ、児童期前半には前頭前皮質(前頭葉の一部)などの脳領域の皮質が薄いが、11 歳までに皮質の厚さが急速に増大し、その後は青年期を通じて減少していく傾向が顕著にみられた。そしてそのグループの特徴は、皮質の獲得にかける期間が長く、変化の度合いは最も急激
  • 前頭葉の一部である前頭前皮質は情報処理の階層構造の頂点に位置し、五感のすべてから高度に処理された情報を受け取る。また、同様に前頭葉の一部の外側および内側前頭回も重要
  • そして、それらの領域は被験者たちが IQ テストを受けている際に最も活発になる部位であり、IQ の個人差は、外側前頭前皮質における機能的 MRI信号の振幅と相関することも示されていた

とても乱暴に要約すれば、「前頭葉の皮質の厚さの増減ペースが、IQが高い子供とそうでない子供では異なる」ということです。なお、皮質は厚ければ厚いほどよいという単純なものでもないようです。

そして、もう少し分かりやすい相関は「Study gives more proof that intelligence is largely inherited」という研究が紹介しています。

  • 知能指数に大きな影響を与える脳の神経線維(軸索)の質の高低は、遺伝子の影響が大きいことを発見
    (軸索とは絶縁性のリン脂質の層に覆われ、脳の信号伝達速度に影響する脳の構造物で、厚ければ厚いほど伝達が速い)
  • 23組の一卵性双生児と同数の二卵性双生児の脳をそれぞれスキャンし、各グループを比較したところ、知性を左右する多くの脳領域では髄鞘の完全性が遺伝子により決定されることが判明
    (一卵性双生児が同じ遺伝子を共有するのに対し、二卵性双生児はおおよそ半分の遺伝子しか共有しないことを利用)

なお、いずれの研究でも子供時代を越えて青年期以降に入っても、成長の余地が残されているとのこと。頑張れ、おじさん、おばさん!

【参考】

1. 「Brain development and IQ」
(https://storage.googleapis.com/natureasia-assets/ja-jp/ndigest/pdf/v3/n6/ndigest.2006.060622.pdf)

2. 「Study gives more proof that intelligence is largely inherited」(https://www.eurekalert.org/pub_releases/2009-03/uoc–sgm031709.php)