自閉症とアスペルガーではIQの特徴が異なる

自閉症や発達障害、ADHD、アスペルガーといった障害は知的障害と関連づけられたり、またIQの高低について議論されたりします。

まず前提として、上記の疾患はそれぞれ複数の障害を同時に発症することはあるものの、全く異なる障害であることをご理解ください。厚生労働省は、上記のような障害について以下の図にまとめています。

それぞれの障害の特性

上記の図を解釈すると、それぞれ重複することはありますが、独立した障害であることが分かると同時に、いずれもIQの高低に影響される知的障害とは異なることが分かります。

なお、一般にIQで知的障害を区分するならば、以下の分類になります(IQ以外にも、生活能力も診断の要素には含めますが、ここでは割愛します)

  • IQが35以下:重度精神遅滞
  • IQが35~50:中度精神遅滞
  • IQが50~70:軽度精神遅滞
  • IQが70~85:境界領域知能(知的障害とは言わない)

さて、上記の表の中では自閉症とアスペルガー症候群が近い存在として位置付けられています。実際、コミュニケーションの障害や、対人関係・社会性の障害、パターン化した行動など複数の特徴が重複しており、似た障害であることは間違いありません。

しかし、IQ(知能指数)における特徴は自閉症とアスペルガー症候群では異なるようです。「アスペルガー障害と高機能自閉症における認知・症状プロフィール」という研究では、その差分について以下のように結論づけています。

  • アスペルガー障害と高機能自閉症は、一般に幼少期の言語獲得の遅れの有無で診断される
  • それぞれアスペルガー障害36名、高機能自閉症37名のウェクスラー式知能検査のを実施
  • 結果、アスペルガー障害は高機能自閉症と比べ、言語性IQ及びその下位検査の「単語」と「理解」の得点が有意に高く、動作性下位検査の「符号」の得点が有意に低かった。
  • また、アスペルガー障害は高機能自閉症と比べ、「言語コミュニケーション」「非言語コミュニケーション」の「自閉症状得点」が有意に低かった

つまり、アスペルガー障害と高機能自閉症の差分は幼少期の言語獲得状況だけではなく、その後の言語能力においても存在する(アスペルガー障害が有意に高い)ということが明らかになった、ということです。これにより両障害の診断がより正確に実現できるようになり、その後の治療に役立ちます。

【参考】

1. 「厚生労働省HP」(https://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html)
2. 「アスペルガー障害と高機能自閉症における認知・症状プロフィール」(https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1100060469.pdf)