IQが高い人の苦悩:実は病気になりやすい

IQが高い人は癌などの比較的重大な疾患には相対的に罹患しづらく、寿命が長い傾向にあります。これは既にデータにて明らかになっており、別記事でも紹介しています。しかし、寿命に直結しないような疾患となるとどうやらIQが高い人の方が罹患し易いようです。

「High intelligence: A risk factor for psychological and physiological overexcitabilities」と言う研究では、以下の事実が明らかになっています。

  • アメリカのMENSA(メンサ)会員3,715人を対象にアンケートを実施し、気分障害・不安障害・注意欠陥多動性障害・自閉症スペクトラム障害・アレルギー・ぜんそく・自己免疫疾患の罹患率をアメリカの全国平均と比較し、結果を得た
Fig. 4
「High intelligence: A risk factor for psychological and physiological overexcitabilities」
(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160289616303324)

(棒グラフは左から気分障害・不安障害・注意欠陥多動性障害・自閉症スペクトラム障害・食物アレルギー・環境アレルギー・ぜんそく・自己免疫疾患を表しており、黄色が全国平均・橙色がMENSA会員平均(医師診断)、茶色もMENSA会員平均(医師診断+自己診断)

  • いずれの疾患についてもMENSA会員が全国平均よりも大きく上回る結果
  • 研究の主催者は、その原因を「高いIQが持つ特徴の一つの、物事に過剰に反応してしまうこと」ではないかと推測

つまりは、日常生活の刺激(ショッキングな出来事等)により身心に失調を来しているのではないかという推測です。そんな馬鹿な。実際、別の研究者はこの結果を受けて「知的な人は平均的な人よりも運動や社会的な活動に割く時間が短い。なので結果として不健康になりやすい」と推測しています。そちらの方が正しそうです。

冒頭に記載した「IQが高い人は寿命が長い」というのは、実は20世紀周辺のデータになります。前世紀では、IQが低い人は労働環境が劣悪なところで業務を実施せざるを得ず、結果としてダメージが蓄積するため寿命が短くなるということでした(例えば、粉塵や化学物質が舞う職場や、喫煙率が高い職場等)。ところが、現代では比較的IQが低い人も、その多くが劣悪な環境で働いているかというと、全くそんなことはありません。もしかすると多少「ブラック」な職場ではあるかもしれませんが、そのブラックの意味合いは前世紀とは全く異なります(おそらく、精神的な意味でのブラックが今世紀のブラックでしょう)。

そうすると、実は21世紀においてはIQが低い人の方が長寿になる傾向になっているのかもしれません。子どもの寿命を延ばしたければ、教育はほどほどのした方がよいのでしょうか?

【参考】

1. 「High intelligence: A risk factor for psychological and physiological overexcitabilities」(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160289616303324)
2. 「Bad News for the Highly Intelligent」(https://www.scientificamerican.com/article/bad-news-for-the-highly-intelligent/)