貧困は低IQに直結する:IQが低い人は生まれの不幸を呪うのも一手

「貧すれば鈍する」ということわざがあります。辞書曰く「貧乏をすると、毎日その生活のことばかり考えるようになるから、人は知恵や頭の回転が衰えてしまい、賢い人でも愚かになるという意味。また、暮しが貧しくなれば、心までも貧しくなるものだということ」ということらしいです。

解説を読むと「確かにそういうこともあるかもしれないな」と思うかもしれません。でも実際貧乏な人の立身出世の物語も聞くし、いったいどちらが正しいのだろうか……と判断に迷います。

実は、最新の研究ではこの「貧すれば鈍する」が「正しい」ということを擁護する調査結果がいくつか挙げられています。「Living in a poor neighborhood changes everything about your life」という記事では、以下の事実が明らかになっています。

  • 悲惨な環境で育った場合、生理学的に脳が変化する可能性があり、それは子供のIQに影響を及ぼす
  • 事実、母親と子供がどのような地域で育ったかにより、子供のIQに大きな差分があることが明らかになっている。貧困地域で育った母親が、同じように貧困地域で子供を育てた場合、子供の平均IQは96で、平均の100よりも、中流家庭で育った母親が中流家庭で子供を育てた場合の子供の平均IQは104にも劣る
  • 加えて、子供が住む地域で殺人事件が起きた場合、事件が起きたエリア近辺では平均IQが7~8 ptも減少している

つまり、貧困あるいはそれに準ずる地域で育ってしまった場合は、子供はどうしようもなくIQが低い環境におかれ、その影響を受けざるをえない、ということです。

また、大人でも同様に「貧すれば鈍する」結果が見られます。「How Poverty Taxes the Brain」という記事では、以下の事実を明らかにしています。

  • 貧困は短期的にも人の知力を鈍らせ、IQを13 pt減少させる可能性がある。貧困状態は人の認識機能に影響を与え、正しい判断を下す能力を妨げ、そして更なる貧困を招く可能性すらある
  • そして貧困状態は、睡眠不足の時や知能が低い場合と同じ影響をもたらす。また、その原因は「プレッシャーにより不安が生まれ、心的なリソースが現在直面する問題に引き付けられる。つまり、日常生活で注意を必要な物事に、貧困のせいで集中できなくなる」としている

なお、上記の研究は以下のように行われました。

  • ショッピングモールで所得が2万ドル~7万ドルの約400人を対象に、「もし車が故障して修理に一定の費用がかかるとしたらどうするか」という質問をする
  • その際に、それぞれの家計の状態を思い起こさせる
  • 修理費用は対象者に応じ150ドルまたは1,500ドルと伝える
  • その後、形を順番通りに並べるなどの認識と衝動抑制に関する一連のテストを行ってもらう
  • 結果、所得水準が低い対象者では、修理費用が1,500ドルと伝えられた人たちはテスト結果が悪く、一方で修理費用が150ドルと伝えられた人たちのテスト結果は、所得がより高い人たちと同じであった

要すれば、「貧すれば鈍する」というのはおおむね事実で、子供であり大人であり精神的によりも先に経済的に優位に立たなければ、どんどん窮地に追い込まれていく、ということではないでしょうか。なかなか厳しい研究成果でした。

【参考】
1. 「Living in a poor neighborhood changes everything about your life」(https://www.vox.com/2016/6/6/11852640/cartoon-poor-neighborhoods)
2. 「How Poverty Taxes the Brain」
(https://www.bloomberg.com/news/articles/2013-08-29/how-poverty-taxes-the-brain)