とても賢そうな言動をする人に、「この人IQが高いな～」と思うことは日常生活においてもあるでしょう。例えば、会社で異様に頭の回転が速い上司がいたとします。そうするとあなたは、「賢い人」あるいは「知能に優れた人」と思うかもしれません。これは、正しい反応です。
一方で、IQが高いが「賢いとは言えない事」例も多々あります。例えば一昔前で言えば某宗教団体にハマってしまって悪事に手を染めた人の中には、超一流と呼ばれる大学の出身者がいました。こういう人は確かにIQが高いかもしれませんが、「賢い」選択が出来ていたとは言えません。
このことについて定量的な研究も行われています。「Why a High IQ Doesn’t Mean You’re Smart」という記事では、以下のようなものになっています。
・（当時）ブッシュ前米大統領は愚か者呼ばわりされることが多かったが、彼のIQスコアは120以上と推定される。これは全人口の上位10パーセントに入っていることを意味し、決して低い値ではない。しかし側近たちですら、彼の判断力や意志決定能力をあまり高く買っていなかった。IQが高いのに愚かというのは、一体どういうことなのだろうか
・トロント大学の心理学者曰く、「これにはIQテストの持つ限界が関係している。IQテストは論理力や抽象推論力、学習能力、一時記憶能力などといったある特定の精神機能を測定するには極めて有効だが、そうした機能をどこに振り向けるかという理性的判断力を測ることはできない」
・ハーヴァード大学大学院のDavid Perkins氏曰く「私たちの精神はサーチライトのようなものだ。IQはサーチライトの明るさを測定する。しかし問題は、サーチライトでどこを照らすかということなのだ」
特に3つ目のコメントが示唆に富んでいますね。これでブッシュ元大統領を揶揄しているとしたら、お手本のようなアメリカンジョークと言えるでしょう。
また、別の「Fractionating Human Intelligence」に掲載されている研究でもIQだけでは知能は測れないことを示しています。これも以下に論旨を示します。
・ウェスタンオンタリオ大学の研究チームは、12種の認識力関連のテストを受けた10万人分のデータ、及びそのテストを受けながら脳スキャンを行った少人数のサンプル群を分析
・考察として、「IQというものが脳にあるならば、スキャンによってそれは明らかになるはずだが、いわゆるIQに関わる脳の部位は1つでは無いことが明らかになった」
要すれば、仮説として脳のIQを司る部位があるとすれば、それはIQを発揮するべき作業において強く反応するが、実験ではIQという「単一の」部位は見られなかった、ということですね。ここからの示唆は、「IQだけでも単一の脳の反応でないので、況や知能をや」といったところでしょうか。
いずれにせよ、IQの高そうな人を猛進して、その人が「賢い」と誤認しないほうがよい、ということでしょう。
【参考】
1. 「Why a High IQ Doesn’t Mean You’re Smart」
(https://science.slashdot.org/story/09/11/04/178252/Why-a-High-IQ-Doesnt-Mean-Youre-Smart?art_pos=9)
2. 「Fractionating Human Intelligence」
(https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273(12)00584-3)
