IQテストでは「超天才」は原理上発見できない

IQテストで自分のIQを測定できる、と思っている人は多いし、それは間違いではありません。しかしそれは、あなたのIQがテストの保証する測定可能範囲内のIQであるからに他なりません。

そもそも現状のIQテストの測定方法について説明しましょう。簡単に言えば、「幅広いIQの人に問題を解かせて、それを元に点数毎に分布を作る」という表現で、遠からじだと考えてよいでしょう。そして現行のWAIS系のIQテストでは、成人IQの最高測定範囲はIQ155であり、IQ156以上は「それ以上」という評価になってしまいます。

なお、IQ156以上の人がどのくらいいるのか。ウェスクラー式は中心値(当然)100、標準偏差15で評価しているため、人類上位「0.011%」(約10000人に一人)、現生人類では19.3万人存在します(なお、現生人類は77億人とします)。高知能集団であるMENSAが上位2%の人類を対象としていることを考えると、圧倒的少数です。おそらくあなたはその中には入らないでしょう。

しかし、約19.3万人の知能は現行のテストでは測定できません。なぜなら、そのテストを測定する際のサンプルに十分量彼らが入っていなかったからです。もっとも、WAIS系のテストは知的障害などの診断に用いられる場合が主なため、そのような使い方を想定しておらず、高い知能を測定することに特化していません。

「高い知能(=ハイレンジ)向けのテストが世の中にはありますよね?」という質問は当然予想されますが、そのような試験は簡単に言えば「大体こんな感じが難しいでしょう。このくらいの難易度問題が〇〇問解けたので、大体IQ170くらい!」という結果の出力になります。なぜなら、高い知能を持つサンプルを集めるのが極めて困難であるためです。正確に高IQを診断するということの社会的意義も、現在は求められてはいません。もちろん、ギフテッド的な子供を選抜することの重要性は認知されつつありますが、彼ら彼女らの正確なIQを算出ことは誰も要求していません。

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もっと言えば、IQテストの結果というのは複数の試験結果の加重平均的に算出されます。分かりやすいように言えば、「国語」と「算数」の試験で構成されていて、その平均が「あなたのIQ」になるわけです。

ここで生じる問題は「国語」だけの超天才や、「算数」だけの超天才は測定できないということです。これもかみ砕くと、加重平均した結果のIQが「100」であるとき、それは国語と算数が「100と100」の生徒も、「110と90」の生徒も、「120と80」の生徒もIQ100なのです(本当はもっと複雑に処理されますが)。と考えると、IQ156以上の国語、算数それぞれの天才の数は、平均IQが156の天才よりもずっと多くなります。そうすると、その数は19.3万人ではきかないでしょう。より多くの天才を取りこぼしている可能性があります。

また、突き詰めていくとIQ192程度で、そのIQを誇る現生は1一人となります。そうすると、理論上IQ193はどうやっても測定できません(数学的にはもう少し前段階で測定できなくなりますが)。なので、IQ194以上の天才のIQを正確に測定することは叶わなくなります。比較できないので、当然ですよね。

とにもかくにも、現行のフォーマットでは天才のIQを正しく測定することはできません。しかし案ずるなかれ。一定以上のIQの正確な測定は「趣味」でしかないので、今のところそれによる弊害は特段発生していないのですから。