「IQサプリ」というエンターテイメントの功罪

「IQサプリ」という番組を覚えておりますでしょうか。正式名称は「脳内エステ IQサプリ」で、フジテレビ系列の番組として通常放送は2004年~2009年に放送されていました。

非常に良い番組でした。和気あいあいとした、殺伐としないような雰囲気作りは上手く、また司会の伊東四朗のファシリテーションも見どころの一つでした。実際、FNS各局は「児童・青少年に見ていただきたい番組」として推奨していました。推奨されて然るべき番組でした。

さて、問題はこの番組をIQ(知能指数)を評価する番組として見た場合の功罪です。

まず功について。IQという概念はこの番組で一気に普及したと言ってもよいでしょう。お茶の間の人気番組としてその役割は大きく、俗に言う「脳に汗をかく」というような問題は上手く作りこまれていて、「確かにこれを解ける人は頭が良い」と思わせるには十分でした。

一方で罪について。この番組では、かなり「軽く」IQが扱われていました。例えば「この問題が解ければIQ120」など。

そんなわけがないでしょう。ある一問が解ければIQが測れるなんて、そんなわけはありません。もしかすると(あるいは、当然)番組サイドも「そんなわけはない」と思ってその数値を出していたかもしれません。より譲歩するならば、「IQ120相当の人のうち、80%の人が解けるため、この問題はIQ120とする」と番組が捉えていたとしても、視聴者には全く伝わっていませんでした。そもそもIQというのはかなり複合的な問題を解くことでしか測定できない(そしてその測定すらもかなり疑問の余地はある)もので、しかも専門医が数時間張り付いて実施するものです。とてもではないですが、テレビ番組の仕様では、正しい条件とは比較になりません。特に、子供も主な視聴者層の一つであった番組ですので、「はい俺この問題解けた! だからIQ120! 俺、優秀!」という誤解は絶対に招いていたはずです(一定数そういった子供が出るのは仕方がないことではありますが)。

そして、聡明な視聴者の一部は「IQなんてあてにならないな」と思い、そうでない視聴者の一部は「IQが低い奴は馬鹿だ」という結論を導き出します。いずれも、IQを理解する上ではかなりのマイナスに働きますね。

伊東四朗、81歳でもモヤッとボール頭からかぶる 『IQサプリ』復活 | マイナビニュース

(マイナビニュースより(フジテレビ))

そんなわけで、功としては「IQの認知度を上げたこと」、罪としては「IQの理解を深められなかったこと(そして、誤解を招いたこと)」にあります。個人的には、視聴者のIQリテラシーを底上げするような番組が続いてくれればと思っておりますが、2021年現在そのような番組はまだないようです。

もっとも、番組としては面白かったですけどね。モヤッとボール、かわいかったですし。

【参考】

1. 「フジテレビHP」
(https://www.fujitv.co.jp/b_hp/iqsupli/)

2. 「マイナビニュース」
(https://mdpr.jp/news/detail/1844018)