一般的に「先生」と呼ばれるような職業についている人は、概して「賢い人」と呼ばれることが多いでしょう。例えば、弁護士の先生と言われると、別にその人個人に尊敬の念をもっていなかったとしても、「結構賢そうな人らしいな」と身構えてしまいます。
一方でそれとは真逆の職業、例えば所謂ブルーカラーの単純労働者の人や、あるいは単発のアルバイト募集で集められたような工場のピッキング作業に従事する人に対して、おそらく一般的には職業や従事する仕事だけを聞いて、「あ、この人賢いんだな」と思う人は少ないはずです。特定の職業を揶揄したいわけではなく、あくまで一般論として。
実は、その感覚はおおむね正しいということが複数の研究で証明されています。
「Demographic characteristics and IQ among adults: Analysis of the WAIS-R standardization sample as a function of the stratification variables」という論文からは、以下のような表を作成することができます。
なお、上記の表はアメリカの20-54歳の一部を母集団としています。
また、一方で書籍「Coming Apart: The State of White America, 1960-2010」では、以下のような結果が記載されています。
これらの結果から、IQが高い職業とそうでない職業がある、ということは間違いなく言えるでしょう。最初に例に出した士業は、おそらくどのような調査でもIQが高い部類に入るはずです。
一方で、上記の結果が出たからと言って人間としての優劣が決まるわけでは決してありません。まずもって、IQの高低が人間の優劣を決定するとすれば、その際にはIQの低さを揶揄するような人々は決してIQが高いとは言えず、所謂「ブーメラン」のような非難になり得ます。また、そもそもIQが高いことが人間にとって良いことかということさえも結論づけられていないのです。例えば、戦場ではIQの高い人間の方が死にやすいという研究結果もあります。
また資本主義に鑑み金銭を獲得している人が偉いと(不愉快ながら)仮定をしても、IQが高い人が優先的に金銭を獲得して豪華な暮らしをしているかと言えば、そうでない場合も容易に考えられます(そういった傾向はあるかもしれませんが)。
つまるところ、このような研究結果はただ事実を事実として受け止め、それによって人間の評価に結びつける必要は全くないのです。そして、そのように考えるべく努めるべきではないでしょうか。もっとも、そうし難い魅力がこの表にはあると考える人が一定数いるのもまた事実ではあり、そこが頭の痛い所です。
【参考】
1.「Demographic characteristics and IQ among adults: Analysis of the WAIS-R standardization sample as a function of the stratification variables」
(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0022440587900355?via%3Dihub)2. 「Coming Apart: The State of White America, 1960-2010」
(Charles Murray)