新型コロナウイルス禍では、新生児のIQが低下する可能性がある

新型コロナウイルス罹患により、「ブレインフォグ」と呼ばれる「脳に霧がかかったような」症状が発生し、IQが下落するというのは既に先行研究として存在しています。

しかし、こと新生児においては新型コロナウイルスに罹患していなくてもIQが低下する可能性があることが、この度研究によって示されました。

米国の研究によれば、コロナウイルスのパンデミック中に生まれた子供は、以前に生まれた子供と比較して、言語、運動、および全体的な認知能力が低下する傾向が見られているとのことです。これは、保育園やその他の施設が新型コロナウイルスの影響によって閉鎖され、それにより外的な刺激が弱くなったことや、他者との相互作用の減少が影響として考えられます。

試験は、通常のIQテストとは異なり乳幼児の認知発達を評価するために設計されたテストで行われました。その中で、パンデミックに先立つ10年間と比較し、3か月から3歳までの子供たちの標準化されたテストの平均点が下落したというデータが得られています。この研究では、米国ロードアイランド州の672人の子供を対象として、うち188人は2020年7月以降生まれ、308人は2019年1月以前生まれ、176人は2019年1月から2020年3月の間に生まれています。また、調査に含まれる子供は満期産で発達障害はなくほとんどが白人でした。

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自動的に生成された説明

一方で、この理解に対して批判することもできます。当該論文は現時点では査読付きではないため、信頼性に疑問が残るところもあります。また、そもそも「IQテスト」ではないため、IQの測定が実現出来ているのかどうかは疑問が残ります。少なくとも、原著論文ではIQを測定しているとは主張していません。また、サンプルのバラツキの多さも気になります。そして、著者の結論も「確実なことは言えないが、パンデミックの影響で生じた社会経済的な変化の影響が出ている可能性がある」という旨であり、断定的な文言は避けています。

更に、International Congress for Infant Studies(乳幼児研究国際学会)はこの論文に対して、Twitterにて以下の要旨で反論を行っています。

・国際乳児研究会議の理事会および乳児の認知発達の専門家として、この未発表の記事からこの種の結論を引き出すことは時期尚早であり、賢明ではないと感じている

・世界的パンデミックの間に幼児が生まれることで、負の影響と正の影響があるかもしれない。その中で、この結果は信じがたく、主な主張(外的接触など)とは何の関係もない原因から生じている可能性がある。(例えば)見知らぬ人が顔を覆って、なじみのない環境で実施したということも想定される。そうした影響は、乳児のパフォーマンスに影響を与える

・我々(学会)は乳児の回復力について楽観的である。代替となる説明が事実上除外される(=この論説が正しいと認められる)まで、メディアと保護者自身が、この結果から協力かつ恐怖を誘発する結論を引き出すことは控えて欲しい

つまるところ、まだ十分な結論は導き出せないということです。

一方で、乳児の回復力には楽観的であっても、ややもすると手遅れになることがあります。もしもあなたの子供に外的な刺激や相互作用が不足しているとすれば、それを補ってやることは、彼らは否定しないでしょう。少なくとも、(数値についてはともかくとして)「完全にデマ」と蹴とばせるほど我々の知見は蓄積できていません。

【参考】

1. 「Children born during pandemic have lower IQs, US study finds」(https://www.theguardian.com/world/2021/aug/12/children-born-during-pandemic-have-lower-iqs-us-study-finds)

2. 「Impact of the COVID-19 Pandemic on Early Child Cognitive Development: Initial Findings in a Longitudinal Observational Study of Child Health」
(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.08.10.21261846v1.full.pdf)

3. 「【デマ注意】「新型コロナ拡大後に生まれた幼児、IQ平均78」というデマへの注意喚起 – Togetter
(https://togetter.com/li/1761727)