組織の命運を支配する「組織IQ」を向上させる方法は?

人間にIQがあるのと同じく、組織にもIQがあります。その名も「組織IQ」。組織IQというのは、「組織内外にある情報を取り入れ、組織内部で情報を共有し、実行可能な意思決定を行う能力」です。インプットしてアウトプットをする能力と言えば分かりがよいでしょうか。この組織IQでは、「外部から情報を受け取る仕組み」「知識を共有・再利用する仕組み」「迅速かつ適切な意思決定を行う仕組み」を評価します。

さて、この組織IQですが企業にとっては重要な指標の一つです。経済産業研究所の調査では、米国シリコンバレーの28社の平均と比べ、日本の大手ハイテク企業17社(半導体、パソコン、情報家電、携帯電話などの事業部門)の組織IQを算出では日本は米国により劣っているという結果が得られています。具体的には、17社平均の内部知識はマイナス0.167で米企業に劣り、外部情報(0.071)、意思決定(0.006)は大差なく、情報軽視の傾向が見えています。一方で組織フォーカスは0.216、知識創造は0.326と日本がリードしており、組織の一体性は高いという結果になっています。

この重要な指標をどう改善すればよいのか。

ピーター・ドラッカーは「ある組織と別な組織の、唯一かつ本当の違いは、その組織を構成する人(能力)だけである」と述べており、この言葉は組織IQにも当てはまります。つまりは、人材によって組織IQは規定されるのです。

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そして優れた人材の育成(獲得)は、「トップダウン」か「ボトムアップ」いずれかによって達成されます。

まずはトップダウン。論外なのは「生え抜き主義」や「イエスマン育成」でしょう。近年生え抜き主義(プロパー偏重)が徐々に見直されていますが、大企業を中心としてまだまだ生え抜きが優遇されています。具体的には、給与面では優秀な外部人材の引き抜きで当然高くなるはずの外様の給与が据え置かれている例も見られます。これは、生え抜きの給与水準に合わせろというレベルではありません。優秀な人材には、他者よりも優秀な給与を与えなければいけないという、ごくごく当たり前の話です。

また、「イエスマン育成」に関しては、おそらく「そうなって欲しくないのに……」と経営層は感じているかもしれません。しかし、評価基準(KPI)がそれに反映されていないのです。そこを変えなければ、部下は当然そのKPIに従います。

ボトムアップ的な側面で言えば、社員の奮起に期待……ということになりますが、急にそれを言っても望めないでしょう。採用段階でそのような気概のある学生を積極的に採用することが一手ですが、人事部にそれを伝えるのはトップ層の役目です。

つまりは、組織IQを上げるにはトップダウンしかないということです。当たり前ですが、社員は勝手には育ちません。

【参考】

1. 「組織と人材 | 経営を学ぶ~経営学・MBA・起業~」(https://keiei-manabu.com/humanresources)
2. 「独立行政法人経済産業研究所」(https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/cp/18.html)
3. 「個人IQ<組織IQの実現(学習する組織の構築)」(https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=16393)