実は現代人のIQは低下傾向にあるという可能性

人類全体のIQは年々上昇しているとされています。ミシガン大学のNisbett教授によると、IQの平均は1947年から2002年の間に18上昇しており、特に30年間で約10上昇していいます。この現象のことをFlynn effect(フリン効果)と呼びますが、原因は以下のようなものが想定されています。

  • 学校教育による知能の増加
  • 「テスト」というものに触れる機会の増加
  • 現代今日の「刺激的な」環境(現代は昔よりもはるかに多くの人々が、仮説やカテゴリなどの抽象的な概念の操作に慣れるような環境にある)
  • 栄養の向上(頭蓋骨の発達などに寄与)
  • 健康状態の上昇(例えば、感染症の罹患は脳の生育とバッティングし、罹患者は知能が低くなる傾向にある等)

上記の原因をみて分かることは、特に先進国に関して「頭打ち」に近い項目があることです。栄養の向上や健康状態はもちろん、学校教育の充実度は実際のところ先進国でここ数十年目覚ましい進歩があったとは言えません。むしろ、「テスト」らしいテストは減りつつあるところもありますし、現代の「刺激」はYouTubeなど上述の「仮説」や「抽象」な刺激とは遠い所に進みつつあるという見方もできます。

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上記の理由が直結しているかは分かりませんが、近年その「フリン効果」が弱まり、現代人のIQの上昇に歯止めがかかっている、という研究結果が得られています。

米国科学アカデミーの機関誌PAMSにおいて、ノルウェーのラグナー・フリッシュセンターの研究プロジェクトは「フリン効果は1970年代半ばにピークに達し、それ以降、明らかにIQが低下している」という結果を発表しています。同プロジェクトでは、1962年から1991年までに生まれたノルウェー人男性73万人以上を対象に、徴兵検査によって得られたデータから、特に18歳または19歳時点のIQを分析したものです。その結果、1962年~1975年生まれの対象者ではフリン効果が認められましたが、75年を境に1世代あたり平均7ポイントIQスコアが低下していたと確認されました。つまり、フリン効果どころではなく「負」のフリン効果が働いているということです。なお、この結果は血縁関係にある家族内でも同様なようで、父よりも息子、兄よりも弟というように、親子や兄弟でも同じ「負のフリン効果」的な結果が得られています。

この結果は実は単独のものではなく、他国でも類似の結果が得られています。現段階ではその直接的な原因は明らかになっていませんが、上述した複数のどれか、あるいは複数が原因に当てはまると考えてもおかしくはないでしょう。子育て世代の方は、「手なり」の教育では不十分になる可能性があることを認識した教育が必要かもしれません。

【参考】

1. 「Flynn effect and its reversal are both environmentally caused」(https://www.pnas.org/content/115/26/6674)
2. 「The negative Flynn Effect: A systematic literature review」(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0160289616300198#!)
3. 「5 Experts Answer: Can Your IQ Change?」(https://www.livescience.com/36143-iq-change-time.html)