IQテスト(知能検査、知能テスト)にはおよそ100年の歴史があります。本稿では、詳細になりすぎないように歴史をおさらいします。
19世紀には既に、フランシス・ゴルトンらによる知能遺伝論や、キャッテルらによる知能を測定しようとする試みはありましたが、広く普及はしませんでした。しかし、全員入学の学校制度が普及するにつれ、先天的に学力などで同年齢児に追いつけない児童の存在が問題となっていました。
1905年、アルフレッド・ビネーとテオドール・シモンによって「知能測定尺度(ビネー‐シモン法)」が世界初の近代的知能検査として作成されました。背景としては上記のような必要性があり、1904年にフランスのパリで、「異常児教育の利点を確実にするための方法を考える委員会」が発足されたこと、そしてこの委員であったのが、ソルボンヌ大学の心理学者アルフレッド・ビネーであり、弟子の医師テオドール・シモンと協力してビネー・シモン法の作成に至りました。
なお、日本においては、ビネーの初版発表から程なくして紹介された。1908年に三宅鉱一が、池田隆徳と連名の「知力測定」という論文の中で1905年版ビネー法を紹介し、また実際に児童に対して自作の検査を実施しました。
その後ビネーは1908年と1911年にも改訂版を出し、1911年に死去。
1912年、ドイツのウィリアム・シュテルンが心理学会にて、「知能指数」と「知能年齢」という指標を提唱。さらに、同年アーサー・シントン・オーチスが世界初の集団式知能検査を開発。オーチスは続いて軍人徴兵用の集団式の「陸軍A式検査」・「陸軍B式検査」を開発。
1916年にルイス・マディソン・ターマンによって「スタンフォード改訂増補版ビネー‐シモン知能測定尺度」が発表し、同年それを基にスタンフォード・ビネー法が開発。大きな特徴は、シュテルンが提案した知能指数を結果表示に使用していることでした。
1917年にロバート・ヤーキーズらによって陸軍用の知能検査が発表され、これは。第一次世界大戦に参加する新兵に対して実施されました。
1919年に久保良英によってビネー法の日本での本格的な標準化が実施されました。なお、久保は1942年の「国民学校児童知能査定法」などいくつかの検査を発表。更に日本では、
1930年に鈴木治太郎によって「実際的・個別的智能測定法(鈴木ビネー知能検査)」が発表されました。これは1956年まで数回の改訂が進行。
そして1936年に田中寛一によって「田中B式知能検査」が発表。これは現在も利用される田中ビネー式の元となるものです。なおほぼ同時に言語式の「田中A式知能検査」が発表されています。そして田中は1947年に「田中ビネー知能検査」を続けて発表しました。この田中ビネー知能検査は2003年に田中ビネー知能検査V(ファイブ)」に更新されています。
1939年にデビッド・ウェクスラーによって「ウェクスラー・ベルビュー知能検査」が発表されました。これは成人向けの個別式知能検査として言語性と動作性の2領域を診断的に検査するのが特徴であり、現在のウェクスラー式の祖になるものです。その後ウェクスラーは1949年にWISC(児童向け知能検査)、WAIS(成人向け知能検査)、WPPSI(幼児向け知能検査)を発表。現在までそれぞれ改定が繰り返されています。2021年現在では、WISC-V、WAIS-IV、WPPSI–IVがそれぞれ最新版となっております。
1986年にロバート・ソーンダイク(有名なエドワード・ソーンダイクの孫)他2名によって「スタンフォード・ビネー知能尺度第4版」が発表されました。これも一般に用いられる検査の一つですが、ビネー法の特徴である知能年齢などの概念が棄却されており、結果としてウェクスラー系に近いものになっています。
【参考】
1. 「日本文化科学社HP」
(https://www.nichibun.co.jp/)
2. 「Wechsler Intelligence Scale for Children | Fifth Edition」
(https://www.pearsonassessments.com/store/usassessments/en/Store/Professional-Assessments/Cognition-%26-Neuro/Gifted-%26-Talented/Wechsler-Intelligence-Scale-for-Children-%7C-Fifth-Edition-/p/100000771.html)