IQテストには2種類のテストがあります。一つは、WAISやWISCなどの「然るべき機関で受験する然るべきテスト」。もう一つは、ネットなどで数分~数十分で受験できる「簡易的なIQテスト」。後者の中には、かなり質の悪い、何の根拠もないテストというものも含まれます。
さて、この「然るべき」IQテストとそうでないものを分かつのは一体何なのでしょうか。その最たるものは、「妥当性」です。言うなれば、正しいIQを測定しようとすると、前者に含まれるような試験を受けるより他はありません。そして前者と後者を隔てる最も大きな壁は「労力」です。
その労力について、例えばWISC-R(児童向け知能検査)ではその日本版においてですら欧米版の出版後3年以上の年月をかけ、その間には全国で49名の検査者が6歳~16歳まで各年齢それぞれ100人以上、合計1,500名ほどの被験者に対してテストを実施することで、妥当性を高めています。WISC(ないしWAIS)以外のテストがこれほどの労力を掛けられているかと思うと、疑問を抱かざるを得ませんし、その妥当性には当然疑問符が付きます。
また、コストについて差分は明白です。例として、WAIS(成人向け知能検査法のうち最も一般的なもの)について以下のコストを提示しておきます。
- 受験費用:30,000円前後
(条件を満たして保険を適用する場合低額になる可能性もある)
- 試験問題/解答集(日本版WISC-IVコンプリートセット):143,000円(検査者が検査をするためのもので、受験の過去問や練習問題に相当するものではない)
何かを作成する場合、それにかかった費用は回収の必要があります。IQ検査は慈善事業ではないので、(国庫の補助はある可能性はありますが)なんとかして費用を回収するより他はなく、そのために受験費用や試験問題の費用に負担が寄ります。
なおWAISやWISCなどの正式なテストは、いずれも専門家(臨床心理士)が受検者と1対1で行う個別式の検査です。検査を行える人は、心理アセスメントに関する知識と経験を持つ専門家に限られており、関連分野の博士号や臨床心理士・特別支援教育士・学校心理士・臨床発達心理士の有資格者、医療関連国家資格所有者などの専門性の高い検査者が行うこととされています。ここでも、前者の試験の妥当性が裏付けられます。
ちなみに、全員が全員WAISやWISCを受験する必要は全くありません。なんとなく自分の「IQっぽいもの」を知りたいのなら、本格的なテストを数万円払ってまで受験する必要はないのですから。
【参考】
1. 「日本版WISC-R知能検査法」(書籍)
2. 「日本文化科学社HP」(https://www.nichibun.co.jp/)