Twitterなんかを見ていると、「人はなんて愚かなのだ。昔の人はこんなに愚かではなかったはず」と思ってしまうかもしれません。先人の知恵というくらいですし、昔の人の方が賢かったと思うかもしれません。また、「最近の若者は……」という言葉は古代5000年前のエジプトの遺跡からも見つかっているそうな。
ところがその感覚は間違いかもしれません。実際には「フリン効果」という働きによって、人類の知能指数(IQ)は以前と比べて飛躍的に上昇しているのです。
「フリン効果」とは、一般には以下のように説明されます。
- フリン効果はその現象を発見した「ジェームズR.フリン」にちなんで名付けられた。この用語自体は、リチャード・ハーンスタインとチャールズ・マレーの著書「ベル・カーブ」に初めて出現
- 用語の意味は「IQスコアの経年的な上昇」で、この裏付けとしては長期的な同一(とみなしてよいような)集団のIQテスト結果の観察があります。例えば、「NATOの軍事ドラフトに使用されるテスト」など
- すべての主要なIQテスト、すべての年齢層、すべての能力(IQその他能力の高低)、およびすべての現代の先進工業国(フリン教授は35カ国からの知能検査のデータで確認)フリン効果は確認可能で、増加は継続的であり、少なくともテストの初期から1990年代半ばまでほぼ直線的に増加
上記以外にも、例えばBBCニュースの「Are humans getting cleverer?」に依れば、キングス・カレッジ・ロンドンの研究チームは、過去64年間に48カ国で実施された知能検査のデータを集めて分析した結果、1950年からIQの平均値が20ポイントほど上昇していることが判明したとのことで、裏付けは世界中に無数にあります。
なお、フリン教授ら専門家は以下のようなもので(あるいはその複合により)、フリン効果の理屈の説明を付けようとしています
- 学校教育による知能の増加
- 「テスト」というものに触れる機会の増加
- 現代今日の「刺激的な」環境(現代は昔よりもはるかに多くの人々が、仮説やカテゴリなどの抽象的な概念の操作に慣れるような環境にある)
- 栄養の向上(頭蓋骨の発達などに寄与)
- 健康状態の上昇(例えば、感染症の罹患は脳の生育とバッティングし、罹患者は知能が低くなる傾向にある等)
その他にも妥当性のある学説は存在しそうで、今後も発見されることでしょう。
いずれにせよ、この「フリン効果」という現象がある事実と複数の理由により立脚し説明できることであるため、否定する余地は少ないです。そうは思えないことも多々ありますが、今の人って意外に結構賢くなっているようですよ。
【参考】
1. 「The Mean IQ of Americans: Massive Gains 1932 to 1978」
(http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.730.856&rep=rep1&type=pdf)2. 「Flynn effect」
(https://en.wikipedia.org/wiki/Flynn_effect)3. 「Are humans getting cleverer?」
(https://www.bbc.com/news/magazine-31556802)